研究課題
基盤研究(C)
有限個の生成元と有限個の定義関係で決まる代数系(有限表示代数系)の様々な決定問題は、近年、計算科学との関連もあり、盛んに研究されるようになってきている。本研究では、有限表示代数系、特に、モノイドと結合的代数を、書換えシステム(Groebner基底)の手法を用いて研究した。代数系が完備書換えシステムを持つための条件、および、そのホモロジー、ホモトピーとの関係を調べた。モノイドが有限完備書換えシステムをもてば、ホモロジー有限性FP3およびホモトピー有限性FDTが成立することは、Squierによって示されている。また、Prideにより、ホモロジー有限性FHTの概念が導入され、FDTからFHTが従うことが示された。第3論文では、有限表示モノイドでは、FHTと両側FP3が同値であることを示した。有限表示モノイドの多くの性質が決定不能問題であることはよく知られているが、これが、線形時間で語の問題が可解であるモノイドにおいてもそうであることを、第1論文で示した。さらに、前出のホモロジカルな性質についても同様であることを第2論文で示した。群および群代数の中心の決定問題の不可能性についての結果は出版予定である(第6論文)。第4論文では、Enriques曲面をEnriques latticeを通じて調べる方向を示した。第5論文ではGroebner基底の理論を書換え理論の立場から、一般の結合的代数とその両側加群上に展開し、自由分解を構成する手法を完成し、代数のHochschildコホモロジーの計算に適用した。これは本研究における最大の成果であり、今後の応用が期待される。平成14年2月に京都大学数理解析研究所において、12月に神奈川工業大学において、平成15年12月には東邦大学において、代数系の計算論に関する研究会を開催し、その成果を報告集(図書1)にまとめた。
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