研究課題
基盤研究(C)
2次の重さkの歪正則ヤコビ形式の次元を計算した。これは、以前に2次の正則ヤコビ形式の次元を計算した結果を拡張したものである。また、ベクトル値の場合にも歪正則ヤコビ形式の次元の計算に必要な、リーマン・ロッホの公式を計算した。これは、未だコホモロジー群の消滅定理を証明していないので、次元公式にはなっていないが、その計算のためには必要なもので、なおかつ次元公式を予想するためには十分なものである。この結果に伊吹山氏の得た結果を応用すると、重さ半整数のジーゲル保型形式の空間の、プラス空間と呼ばれる部分空間の次元が判る(ベクトル値の場合は予想である)。以前に得た、重さ半整数のジーゲル保型形式の次元公式により、それらの空間を明示的に構成出来たが、この結果によってプラス空間も明示的に求めることが出来た(林田氏のコンピュータ計算による)。斉藤・黒川の保型形式の持ち上げ理論は、プラス空間から1次上のヤコビ形式の空間への同型を経由して構成される。これによって2次から3次へのジーゲル保型形式持ち上げ理論が完成したことになる。1970年代に志村五郎氏は1変数の場合に、重さ整数の保型形式から重さ半整数の保型形式の対応、今日において志村対応と呼ばれている対応を発見した。この、志村対応の高次元版を考えようとすることは自然な発想であるが、30年近く経った最近に至るまでその端緒は全く掴めなかった。志村対応は全射ではなく重さ半整数の保型形式の空間の蔀分空間への対応であるので、この部分空間に当たる(と想定される)プラス空間の次元を知ることが重要である。また高次元の場合、志村対応は一般にベクトル値保型形式からベクトル値保型形式への対応であるので、一般化してベクトル値保型形式の場合を研究することが絶対的に必要である。この消滅定理が成り立つと仮定して、今回得られた2次で重さ整数のジーゲル保型形式の空間の次元とヤコビ形式の空間の次元を比較すると、重さ整数のジーゲル保型形式の空間に対応する(と想定される)プラス空間が分かり、それらの次元が完全に一致することが分かっている(伊吹山知義氏による)。これにより、志村対応の2次の場合の存在が予想されるに至った。
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