研究概要 |
今年度は、剰余位数の研究に進展があった。 I aを自然数、pを素数とするとき、我々はaのpを法とする剰余位数の分布を調べるため、Q_a(x; s, t)={P≦x;aの剰余位数≡s(mod t)}という素数集合を導入し、この集合の自然密度を考察してきた。平成14年度までに得られたのは、t=4の場合(平成13年度)およびt=q^r(qは奇素数-つまり奇素数ベキ)の場合(平成14年度)までであった。 今年度は新たに、tが一般の合成数の場合にも上記集合の自然密度の存在を示すことができた。ただし、sが特殊な数になっている場合を除いて、その証明には一般リーマン予想の仮定が必要である。 t=12といった場合に実際にコンピュータによる実測値をとり(x=10^8程度でやってみた)、これを密度の理論値と比較してみると、非常に良い一致をみた。ただ当初、こうした密度は"乗法性"を持っているのではないかと予想していたのだが、理論値・実測値ともこの予想には当てはまらない数値になった。なぜ"乗法性"を持たないのか、その理由を調べるのは今後の課題である(以上、知念宏司氏との共同研究)。 II 同じくpを奇素数とし、2(mod p)の類の剰余位数を考え、これが素数になってしまうような素数集合を考える:R(x)={P≦x;2(mod p)の剰余位数が素数になる} 従来、R(x)≪x(loglog x)(log x)^(-2)が知られていたが(Pomerance,一般リーマン予想を仮定)、我々はこの評価を改良し、R(x)≪x(log x)^(-2)を示した。ただし、ここにも一般リーマン予想の仮定が必要である(C.Pomerance氏との共同研究)。
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