研究概要 |
今年度の成果は次の二点である。 1.昨年度までに得られた結果を論文の形にして、成果に一応の区切りをつけた。 aを自然数として固定し、pを素数として動かす。aのpを法とする剰余位数の分布を調べるため、我々はQ_a {p≦x; aのpを法とする剰余位数≡s(mod t)}という素数集合を導入し、この集合の自然密度Δ_a(S,t)の性質を調べた。今回、一連の論文Part III, Part IVにより、「法tが一般の合成数であるとき、密度Δ_a(s,t)の存在、およびそれを実際に計算するアルゴリズム」を与えた。ただし、ここで密度Δ_a(s,t)の存在を言うには一般リーマン予想を仮定しなくてはならない。上記の結論は今回の科学研究補助金を得るにあたって大きな目標とした点であった。 2.密度Δ_a(s,t)の細かい性質に関する基礎的な研究。 1を踏まえて密度Δ_a(s,t)の計算をしてみると、当初の我々の予想に反して、その分布は非常に複雑であることが分かってきた。これを詳しく調べるには「類Sを固定して法tを動かす」「法tを固定して類sを動かす」と二つの方法が考えられるが、どうやら最初の方法のほうが有望のようなので、今年はこの方向で数値データの収集、tとuがu|t という関係を満たす場合の密度Δ_a(s,t)とΔ_a(s,u)の関係について興味ある結果を得た。ただ、tが大きくなって複雑な合成数になった場合の結果は難しく、今後の課題である。
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