1.1955年、Inkeri、およびCarlitzとOlsonはp分体(p:奇素数)の相対類数をInkeri行列式およびDedekind和を成分とする行列式で表した。研究代表者は、これらを任意の虚アーベル体に拡張した。この2つの結果を投稿していたが、これらの論文受理され、平成14年度に発行された。さらに、津村氏と共に、多重Dedekind和を定義し、後半の結果を拡張した。この論文は期間中に投稿し、受理された。円分体の相対類数公式に現れるDedekind和の相互法則は津田塾大の太田氏らが既に導いていたが、一般化した虚アーベル体のDedekind和の相互法則をも求めることがこれからの問題である。 2.虚アーベル体Kの相対類数を行列式で表したほとんどの公式は、そのKの導手fを法とした数でできる行列Mの行列式で作られている。fの倍数を法として同様にできる行列M'からも公式ができる。当初の予想通り、あるStickelberger元がある群環を作用している状態を調べることで、これら2つの行列M、M'がある条件の下で一致することが分かった。ここで対象となった公式は研究代表者の98年の結果であるが、それを拡張したKuceraや円藤の最近の公式についても同様のことを調べることがつぎの問題である。 3.当初の予定になかったことであるが、以下のことが分かった。1994年、Girstmairによって、導手p(p:奇素数)の虚2次体の(相対)類数は、法pの原始根gを用いて、1/pを1/gでべき級数展開したときの係数で表せる。研究代表者はこの結果を素数べき導手の虚アーベル体まで拡張できた。その方法は、奇素数べき導手のときは、同様にそれを法とする原始根を取り、2べき導手のときは1/5のべき展開の係数を用いるのである。 勿論、これらを任意の虚アーベル体まで拡張することが次の問題である。また1995年にGirstmairが求めた類似の公式との関連を調べることもこれからの課題である。
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