研究概要 |
ゼータ関数に対する,モジュラー関係式を貫く微分積分のルートが存在することを予想して以来,個々のゼータ関数へこの原理を実際に適用している段階である.これまでの研究では,すべて,関数等式が主になっていたところを,ボホナーによる,「モジュラー関係式」を中心に据えることにより,複雑な計算をしなければ分からなかったラマヌジャンのタイプの公式などが,非常に簡明な計算で,しかも,何を計算すればよいか明らかに分かるようになった. すなわち,ガンマ因子が一個の場合には,モジュラー関係式を「微分」することによって,保型形式(の変換公式)がえられ,したがって,関数等式をみたすゼータ関数から保型形式をつくりだすことができ,逆に,保型形式(の変換公式)を「積分」することによって,モジュラー関係式,したがって,関数等式をみたすゼータ函数がえられるという,ヘッケ理論の中身を端的に表す原理がなりたつ.つまり,これまで,保型形式には,モジュラー群が作用すると考えていたところを,単に,正の実軸の掛算の群構造からある程度計算でき,附随するゼータ関数がよく分かるようになった.さらに,この原理により,モジュラー関係式を「積分」することによって,不完全ガンマ関数係数級数表示を経由して,臨界領域でなりたつ唯一の公式である,リーマン-ジーゲル公式に至ることができるものと期待している.この方法が如何に本質をついたものであるかは,既に出版済みの「rapidly convergent series」のタイトルをもつ論文2編および,「Ramanujan's formaula and modular forms」において,この原理により,数10編の論文がこの3篇の論文にまとまってしまっていることからも分かる.また,「divisor problem」,「mean value theorem」の論文は,この原理発見以前の研究であり,これらもやはり,「モジュラー関係式」原理から得られることが分かり,現在論文にまとめている.「Bessel series」の論文は,結晶格子のマーデルング定数のこれまでの研究を「ゼータ対称性」の観点からまとめるシリーズの最初のものである. また,(合流型)超幾何関数表示を導入し,これまで,ベッセル関数の範囲で考察されていた,級数表示の新局面-たとえば関数等式が,超幾何関数の変換公式から出てくる-等の新局面,いわば,21世紀の数論的特殊関数の応用を多方面に渡って研究している.
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