研究概要 |
今年度は3次の数の2元同時近似の問題の特にその体が非総実である場合の理論の完成を目指した。擬Jacobi-Perronアルゴリズムとの関連はほぼ解明できた。すなわちある例外を除けば、その最良の同時近似は,擬Jacobi-Perronアルゴリズムから得られるいわゆる中間近似数で与えられるということである。この結果は,当初予想していたこと、すなわち擬Jacobi-Perronアルゴリズムの主近似で最良の同時近似が得られるのではという見通しとは多少異なった結果である。しかしながら,簡単な場合ですら擬Jacobi-Perronアルゴリズムが最良近似を与えるかどうか知られていなかった現状からすると大きな前進であると思われる。本来の目標であるマルコフスペクトラムの探求であるが,通常の数の近似問題の場合,最良近似の程度とその連分展開とは明快な関係があり,それを用いてマルコフスペクトラムの分析が進められる。同様にして、擬Jacobi-Perronアルゴリズムと同時近似の程度の関係を求め,それを利用してマルコフスペクトラムの研究を進める予定であった。しかしながら上記で述べたように擬Jacobi-Perronアルゴリズムと同時近似との基本的な関係が明らかになったのであるが,同時近似の程度と擬Jacobi-Perronアルゴリズムとの関係までは,まだギャップがありさらに研究中である。 非斉次近似問題の方であるが,その間題を探求する道具として期待されるアルゴリズムの基礎理論を論文にまとめ,現在投稿中である。
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