平成15年度は、CAT(0)空間に作用する群について調べた。CAT(0)空間Xとは、単連結な測地空間で、一般化された意味での曲率が0を超えない空間のことである。代表的な例は双曲空間(断面曲率が常に-1)や、単連結なリーマン多様体でその断面曲率が0を超えないものである。 このようなXへの等長的な群作用については、さまざまな結果があるが、それらは、作用の各元が半単純の呼ばれる場合がほとんどである。 その理由は、作用が半単純な場合、作用で不変なXの部分空間の存在が知られていて、その幾何が、群の解析に役立つからである。 一方、作用が半単純でない場合は難しく、ほとんど結果が知られていない。 本年度の成果として、群の次元と空間の次元が一致する場合、作用が自動的に半単純になることを示した。具体的には次の定理を得た。 (定理)Gを自由アーベル群として、ランクをnとする。 Gがn次元のプロパーなCAT(0)空間に、非連続的に作用しているなら、作用は半単純な変換による。 この定理の応用として、それまで知られていた、Brady-CrispやBridsonの結果を著しく改良した。すなわち、彼らの定理で、作用の半単純性の仮定を取り除くことに成功した。 これによって、群のコホモロジー次元が2であるが、2次元のプロパーなCAT(0)空間に非連続的に作用しない例が初めて確認されたことになる。これらの群は3次元のCAT(0)空間には非連続に作用することは分かっている。 この成果について論文を準備中である。
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