研究概要 |
ヒルベルト空間上の線形変分収束理論は解析学において重要な研究分野であるが,これを拡張して(特に非コンパクトな)リーマン多様体に収束に応用した.その際,固定されたヒルベルト空間上の作用素の摂動を考えるのではなく,ヒルベルト空間自体までも摂動させる必要がある.応用として,収束する多様体のスペクトルについて幾つか新しい結果を得た.また,この研究は確率過程の収束にも重要な応用があることをドイツの研究者から示唆を受けたが,実際そのような仕事のプレプリントを受け取った.現在はさらにこれを非線形に拡張しているところである.ここで言う非線形への拡張とは,ヒルベルト空間を一般の距離空間へと拡張することで,その理論の本質的な部分は解析的というよりは,幾何学的になる.これを説明するため,一つの具体的な定理を挙げると,エネルギー汎関数の収束はソボレフ空間のサブレベルのGromov-Hausdorff収束と同値であることを証明した.この応用として以下が証明できる.一定の次元をもちRicci曲率が一様に下に有界なリーマン多様体の族{M}と点つきGromov-Hausdorff位相に関してプレコンパクトな,(コンパクトとは限らない)距離空間の族{Y}が与えられた時,エネルギーが任意に固定された定数a以下の写像u : M→Yの全体W^a(M,Y)を考えると,族{W^a(M,Y)_<M,Y>}は点つきGromov-Hausdorff距離に関してプレコンパクトである.ここで,写像の間の距離はL^2距離とする.
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