研究概要 |
前年度に引続き距離空間上の変分収束理論を構築した.(ある自然な意味で)収束する空間列X_i→X,Y_i→Yに対して,写像空間{u:X_i→X_i}の{u:X→Y}への収束について研究した.ここに,X_i, Xは測度空間,Y_i, Yは距離空間である.Y_i, Yをある一つのバナッハ空間へ埋め込むことにより,従来Y_i=Yの下で構築した理論を拡張した.また,Y_i,YがCAT(0)のとき,つまり曲率が【less than or equal】0の可縮な距離空間であるときに,Jostが定義した(非線形)レゾルベントの収束,エネルギー汎関数のMosco収束,そのMoreau-Yoshida近似の収束の間の関係を調べた.特にエネルギー汎関数の漸近的コンパクト性の下では,それらの収束は全て同値であることを証明した.これは写像の弱収束の定式化をして,その性質を調べることが,一つの足掛かりになった. 次の課題として,X_i, Y_i上へ群作用があるときに,同変写像空間の変分収束を研究したい.これは,ターゲットY_iが可縮とは限らない曲率【less than or equal】0の空間のときに,その普遍被覆空間とデック変換に適用するために有効である.そのためにはCAT(0)空間上の等長変換および等長群の作用について詳しく知る必要がある.放物的等長変換についてはまだあまり知られていなかったが,今年度この詳しい構造を研究した.具体的には,放物的等長変換の固定点集合の半径はπ/2以下であり,中心点がただ一つ存在することを証明した.また,群がCAT(0)空間へ放物的等長変換として作用したとき,群の次元がCAT(0)空間の次元より小さいことを証明した.これらの結果を基に来年度の研究へ繋げたい.
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