研究分担者 |
藤原 耕二 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60229078)
塩谷 隆 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90235507)
砂田 利一 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20022741)
納谷 信 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 助教授 (70222180)
井関 裕靖 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90244409)
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研究概要 |
有限グラフのアーベル被覆である無限グラフを結晶格子と言う.正方格子,三角格子,六角格子などの周期性のあるグラフのことで物理に頻繁に現われる大切なグラフである.結晶格子に磁場がかかっている場合の電子の運動は磁場付き推移作用素によって記述できる.結晶格子にはアーベル群が作用するが,磁場付き推移作用素はこのアーベル群と可換ではなく,この非可換性が物事を予想以上に複雑にする.例えば,ユークリッド空間の周期的磁場付きラプラシアンのスペクトル構造は単純で,完全に解析されているのとは対照的に,その離散版である磁場付き推移作用素のスペクトルの構造は磁場が無理数であるときにはカントール集合になる.このスペクトルの磁場に対する依存の仕方は変形量子化理論で用いられる,C環の連続場のアイデアを使う.J. Bellissardは非可換トーラスのK理論を用いて量子ホール効果を説明するなど,C^*環アプローチは有用である.このアイデアを拡張することで結晶格子の磁場付き推移作用素に対して、スペクトルのLipschitz連続性を示した.また,等質化のアイデアで,中心極限定理を得た.極限に現われるユークリッド空間の磁場付きラプラシアンのベクトル・ポテンシャルを群コホモロジーの完全系列の結晶格子の標準的実現を用いて説明した. また,磁場のない場合の結晶格子上のランダム・ウオークの極限定理についても幾何の立場で研究を行っている.正方格子上のランダム・ウォークに関する古典的な極限定理を,結晶格子に拡張することによって,その幾何的な意味合いを解明し,結晶格子の調和写像や,空間としてのグロモフーハウスドルフ収東という全く新しい観点から極限定理を記述することに成功した.
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