研究概要 |
平成14年度に行った研究としては次の3つを挙げることが出来る. 1.シリンダー多様体の山辺計量の研究. 2.シリンダー的山辺不変量,オービフォールド山辺不変量の研究. 3.山辺不変量とワイル不変量の研究. 1.シリンダー多様体の山辺計量の研究. シリンダー計量の属する共形類内の計量で,全スカラー曲率および体積が有限となるようなもの全体に制限して,山辺汎関数(i.e.,正規化した全スカラー曲率汎関数)を考え,その下限(i.e.,シリンダー的山辺定数)を達成する計量(i.e.,山辺計量)の存在問題をほぼ完全に肯定的に解いた.またそれに付随する共形不変量であるシリンダー的山辺定数の上限を考えることにより,シリンダー的山辺不変量を定義した.この不変量は,コンパクト多様体の山辺不変量の一般化を与えている.このシリンダー的山辺不変量に関する様々な性質も研究した. 2.シリンダー的山辺不変量,オービフォールド山辺不変量の研究. オービフォールドに対しても自然なオービフォールド山辺定数・オービフォールド山辺不変量の定義を与えることが出来,またこれらはシリンダー的山辺定数・シリンダー的山辺不変量の特別な場合である事を示した.4次元の場合は,Atiyah-Patodi-Singerの指数定理を共形幾何的に適用でき,正の値を取るシリンダー的山辺不変量を上から評価する方法を与えた. 3.山辺不変量とワイル不変量の研究. コンパクト多様体を共形幾何的に研究する場合において,山辺定数・山辺不変量のみでは限界があり,その他の共形不変量およびそれに付随する微分位相不変量を同時に扱う事が有効である.そこでワイル共形曲率テンソルから自然に定義される共形不変量であるワイル定数およびそれから定義されるワイル不変量を考える.共形類に対して,(山辺定数,ワイル定数)の組を対応させると,コンパクト多様体上の共形類全体から2次元ユークリッド空間への写像が定義され,特にこの写像の像自身が,与えられたコンパクト多様体の微分位相不変量となる.この研究では,その像の境界の形状を詳しく調べた.
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