ゲージ理論/重力対応が具体的に実現している例として、最近、特に注目を集めているのは、Vafaが提唱した、いわゆるLarge-N双対性である。この双対性は、ある場合にはM理論の立場から例外型のホロノミー群をもつG_2多様体の幾何学として自然に理解できることが指摘されている。このような興味から、例外型のホロノミー群をもつ多様体の幾何学の研究を進めた。例外型のホロノミー群としてはG_2以外にSpin(7)があることが知られているが、研究分担者の安井との共同研究により、等質空間SU(3)/U(1)を主軌道とする余等質性1のリーマン計量としてSpin(7)ホロノミー群を持つものを構成した。この計量の特徴は、無限遠で漸近的に有限半径の円周S^1が残ることでありALC型の計量と呼ばれている。4次元でこのような特徴をもつ計量は、重力インスタントンとして知られるTaub-NUT計量やAtiyah-Hitchin計量であり、我々が構成した計量はその自然な高次元化とみなすことができる。この意味で、物理的にもM理論のコンパクト化への応用が期待される。ALC型の計量において、無限遠における漸近的なS^1の半径は弦理論の相互作用の強さに対応し、その変形は物理的に重要である。一般にSpin(7)計量の無限小変形が自己双対な調和4形式で記述できることに注目して、具体的なSpin(7)計量に対し自己双対な調和4形式を求めた。また、その調和形式がL^2可積分である場合には、漸近的なS^1の半径の変形に対応していることを確認した。これは局所的な変形の存在に関する議論であるが、現在、大域的な変形の様子についても研究が進んでいて論文を準備中である。
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