研究概要 |
n次元ユークリッド空間のグラフとなる極小曲面を考えるBernstein問題は既に解かれていたが、さまざまな一般化を生んでいる。3次元ユークリッド空間の向き付けられた完備安定極小曲面は平面に限る結果は1つの一般化である。Bernstein問題のトーラス版では、3次元トーラスの安定極小曲面は(全測地的)トーラスとなる。証明は、平行曲面方向に変形すれば面積が減ることからわかる。低次元のトーラスの安定極小曲面に関してMicallefの結果として、4次元トーラスの安定極小曲面は、正則曲線とみなせる。すなわち、低次元トーラスであれば正則性が期待される。最近ArrezoとMicallefによる研究から7,9,10以上なら種数gの安定、非正則、はめ込まれた極小曲面がそれぞれ2g-2,2g-4,2g-6次元トーラスに存在することを示した。彼等は8次元トーラスに種数4以上の安定、非正則、はめ込まれた極小曲面が存在するという予想をたてていた。一方で面積最小極小曲面と安定極小曲面の違いがあるのかどうかを理解するため江尻は次の問題を提出していた。2g次元トーラスの種数gの安定極小曲面はそのホモトピークラスで面積最小か?我々はこれらの問題に対して以下のような解答を与えた。M_gを種数gのリーマン面のモジュライとする。自然数nに対してM_g(n)を、その中の元であるリーマン面は7次元トーラスの中に安定極小はめ込みを持ち、そのホモトピークラス中に面積が異なる安定極小曲面をn個もつ性質があるものとする。この時定理M_g(n)はM_gで稠密であるが成立する。これよりArezzoとMicallefの予想は正しく、2g次元トーラスの種数gの安定極小曲面で、そのホモトピークラスで面積最小とならない例が構成できることがわかる。
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