研究概要 |
本研究は,双曲的3次元多様体のデーン手術によって,非双曲的3次元多様体を生じる例外的デーン手術の分析を目的としている。本年度は平行していくつかの課題に取りくみ,すでに論文発表の段階に至ったものがいくつかある。 3次元球面内の結び目に対して,クラインボトルを生成するタイプの例外的デーン手術に対する分析を行い,双曲型に限らず,すべての結び目を対象として,クラインボトルを生成する手術のスロープに対する結び目種数を用いた上限を与えることに成功した。この上界は最良であることも示され,すでに国際学術雑誌より発表予定である。これに関連して,テキサス大学Luis Valdez-Sanchez博士をレビューのため招聘した。 例外的デーン手術の代表例は,本質的トーラスを生じるタイプであるが,特に3次元球面内の双曲的結び目に対して,非整数手術でそのタイプになるものがあることは知られていた。今年度,そういうタイプの例外的手術を許容するもっとも単純な双曲的結び目は何かという問題に対して回答を得た。結び目の複雑さを測る尺度として,代表的な橋指数に着目し,橋指数が最小となる結び目は(-2,3,7)型プレッチェル結び目とよばれるものただ1つであることを証明した。すでに論文にまとめ,国際学術雑誌に投稿中である。また,本質的トーラスを生じる整数手術に関して,全ての整数が実現可能であることを以前に示したが,結び目の種数の4倍が上界を与えるという予想を提起し,種数1の結び目および交代的結び目という2つの代表的な族に対して予想を証明した。この結果は,すでに国際学術雑誌から発表予定である。 交付申請書に記載したレンズ空間を生成するタイプの例外的デーン手術に関する研究は,現在も進行中であるが,そのような手術のスロープに対する既知の上界を改善することには成功した。ただ,現段階では最良な結果ではないと思われるため,成果発表には至っていない。目下,研究分担者とともに研究を継続しており,最良上界を得ることが次年度の目標となろう。
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