研究概要 |
本研究は,双曲的3次元多様体のデーン手術によって非双曲的3次元多様体を生じる例外的デーン手術の分析を目的としている。特に,本年度は本質的なトーラスを生成する例外的デーン手術に関する2つの課題に平行して取りくみ,一方はすでに論文発表の段階に至った。 1.例外的デーン手術の代表例は,本質的トーラスをふくむ3次元多様体を生じるタイプであるが,特に3次元球面内の双曲的結び目に対して,整数スロープの場合に結び目の種数gの4倍が上界を与えるという予想を提起し,残念ながら完全な解決にはいたらなかったが,非常によい部分解を得た。生じる本質的トーラスと手術ではりつけたソリッドトーラスの芯との最小交点数tを目安として,t≠4ならば最良上界4g,t=4である場合には6g-3という上界を得た。また,さらなる分析により,昨年度に示した種数1の場合の拡張として,種数が2の場合にも最良上界を得ることができた。このことに関しては国内の研究集会及び国際研究集会において口頭で成果発表を行った。 2.3次元球面内の双曲的結び目に対して,高々3つだけ本質的トーラスを生成する手術が存在すると予想されているのだが高々6個というGordonによる一般的な結果の帰結しか知られていなかった。非整,数スロープの場合は,GordonとLueckeにより,結び目のクラスが決定されたことにより,高々3つと判明した。従って,整数スロープしかない場合が問題となるが,今年度の研究によって,本質的トーラスを生成する2つの整数スロープ間の距離が高々4であることを明らかにした。これにより,双曲的結び目は高々5個しかそういった手術をもつことができない。これは上述のGordonの評価を改善するものである。系として,距離が5であるような2つの本質的トーラスを生成する手術をもつ結び目の完全な特徴づけを行うことができた。
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