モラン型特異点のみを許容するn次元閉多様体からP次元ユークリッド空間への無限回微分可能写像が存在するとき、その写像の特異点集合は、定義域多様体の部分多様体となる.n-P+1【greater than or equal】2kのとき、特異点集合を摂動して自分自身と横断的に交わるように取り、その共通部分のホモロジー類のポアンカレ双対を取ることにより、特異点集合の自己交又コホモロジー類が定義できる.定義域多様体が向き付け不可能な場合は、コホモロジー群の係数群を局所系で取る必要があることに注意しなければならない.このとき、こうして定義されるコホモロジー類が定義域多様体の接束の特性類によって表されるかどうかを調べることは、R.Thomによって1950年代に定義された、いわゆる「Thom多項式」の概念の情密化に当たり、特に重要である.本研究では、この自己交又コホモロジー類が定義域多様体のポントリャーギン類に一致するという基本的結果が得られた.この結果から、例えばある場合に具体的に与えた定義域多様体上に折り目写像が存在するための必要条件が得られ、その応用として折り目写像の非存在についての結果を導出することができる.これは、Thom多項式の計算結果からは得られない場合を含む.
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