研究概要 |
平成15年度の研究計画に入れた下記の各項を総括する。 「解法のための境界値逆問題の再定式化」として、これまで随伴変分法を用いて、境界値逆問題を元問題と随伴問題の連成系に再定式化してきたが、反復計算を必要としない解法であるという長所は確かにあるものの、次項の近似解法において数値解の精度を上げることが容易ではないことが、次第に明らかになった。 「再定式化によって導出される問題の近似解法」に付いては、前項に述べたように,与えられた問題に直接、適用可能な新しい近似解法、すなわち、任意多点差分法を開発し、ラプラス方程式の境界値逆問題(コーシー問題)に対して、良好な成績を挙げることができた。任意多点差分法とは,従来の差分法を、参照点を任意に多く取ることが出きるように指数関数を基礎に拡張した、いわば高精度差分法に対して命名したものである。「その近似解法の収束性と安定性」については、数値実験により、安定性を期待できるが、収束性については計算機内での丸め誤差が近似公式の打ち切り誤差を上回るため,検証できなかった。後者に付いては今後,任意多倍長計算を導入して実験的に検証する。 「近似解法が占める元の境界値逆問題との関係」については、近似解を、元の逆問題の解と、解が一意である限り直接対応させることができた。「境界に与えられるデータに誤差が含まれる場合の正則化法」については、新しい解法に関して考察を進められなかった.最後に,「解法の具体的なアルゴリズムを提案すること」については、任意多点差分法と任意多倍長計算環境を組み合わせた直接解法のアルゴリズムを提案でき、その一部の成果を近く予定されている研究集会において発表できるようになった。
|