研究概要 |
1.Dynkin(2002)の超過程に関する一般論の枠組からはずれた特異分枝率を持つ分枝型測度値マルコフ過程を考察し,分枝率の特異性に応じた重み関数をうまく選ぶことにより,その重み付き分枝率汎関数を加法的汎関数として定義でき,対応する特異分枝率超過程の存在を証明した.またそのときの近似過程の収束問題においては,前年度の結果である有限次元分布の意味の収束よりも強い,過程の確率分布のスコロホッド空間上での弱収束として示した.これにより得られた測度値確率過程の見本路の正則性に関しても,適当なh変換を施すと変換に応じて変形されたデータを持つ超過程として実現できて,その過程がcadlagパスを有することなどを導いた. 2.特異な分枝率をもつ広いクラスの中で典型的な双曲型分枝率をもつクラスがある.Mueller-Fleischmannは1997年に局所非有限カタリチックmassをもつ超ブラウン運動としてこのクラスを確率論的に扱った.一方2002年にY.Wangは解析的手法により同じクラスの測度値過程が存在することを証明した.そこでこの双曲型分枝率をもつ超拡散過程(superdiffusion)をWangの解析的手法に習い,分枝率汎関数の正則化近似により構成した.測度値過程のラプラス汎関数による特徴付けに現れるDynkinのlog-Laplace型の積分方程式の正則化近似を考えて解の存在を示し,近似解列の収束性を論じた次にDynkinの超過程理論における等価な積分方程式のGreen作用素とPoisson作用素の項に対応する部分の精密評価を求めることにより方程式自身の収束を言い,特徴付け定理に持ち込んで証明した. 3.双曲型分枝率をもつ超拡散を考える.その正則化近似を考えて過程の特徴付けに現れる近似関数列が特異点を除いたところでゼロに収束すれば,対応する測度値過程が特異点の近傍で強い意味の消滅性をもつことを示した.また双曲型分枝率関数を係数にもつ楕円型境界値問題を考察し,その正値解の言葉で過程の消滅定理が成立するための十分条件を導いた.さらにその状況をもっと具体視するためにラプラス作用素の境界値問題の例を用いて,解の漸近挙動により先の十分条件の検証を行った.
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