研究概要 |
この研究課題において、分担者を含め研究代表者は以下の研究成果を得ることができた。 1.指数分布における未知な尺度母数の関数の最小リスク点推定問題を考えた。損失関数として二乗誤差と標本抽出費用の和を考え、その期待値であるリスクを最小にする標本の大きさの標本を用いて、与えられた未知な尺度母数の関数を点推定する問題である。この場合標本の大きさが十分大きいときの最小標本数には未知な尺度母数が含まれてしまうので、実際にはこの最小標本数による推定は不可能である。そこで、逐次推定方式を提案し、期待標本数および逐次推定方式を用いて推定したときのリスクに関する漸近的性質など逐次推定方式の構造を調べた。まず、最小標本数は具体的に表現でき、その中に未知な尺度母数が含まれているので、このことを考慮して標本抽出の停止規則を提案した。次に1標本当たりの費用が十分小さいとき、期待標本数の2次の漸近展開を求めた。期待標本数と最小標本数との差は、与えられた関数にどのように関係しているかが具体的にわかった。さらに、この停止規則を用いて推定したときのリスクと漸近的最小リスクとの差の2次の漸近展開を求めることにより、この差が与えられた関数および1標本当たりの費用とどのような関係にあるかが具体的にわかった。本論文で得られた成果は外国の学術雑誌に投稿中である。 2.ともに未知な尺度母数をもつ2つの指数分布において、その2つの尺度母数の比を点推定する問題を考えた。損失関数として二乗誤差にそれぞれの標本抽出費用の和を考えた。この平均損失であるリスクを最小にする標本数を使って推定したい。このとき、最小標本数には未知な尺度母数が含まれる。そこで、逐次推定方式を提案し1標本当たりの費用が十分小さいときの平均標本数およびこの逐次推定方式によるリスクの2次の漸近展開を求めた。この研究成果はJournal of The Japan Statistical Society, Vol.33,No,2(2003)に掲載された。
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