研究課題
1.長距離の相互作用をもつ粒子系を記述する、カルジェローサザーランドモデルと呼ばれる可積分性をもつモデルについて確率論の極限定理の立場から定式化し、結果を得る事をめざして研究を続けている。本年度はそれに付随する分配関数のn→∞の漸近挙動を研究した。その副産物として、Σ_<i≠k>1/((x_j-x_k)^2)を一定にたもつ条件の下でΣx^2_jを最小にする(x_j)の経験分布を考えると半円分布に収束することを証明した。この事実はいわゆるマトリクスモデルのGaussian Unitary Ensembleが上のカルジェローサザーランドモデルの第一固有値になっていることにも対応する事実であると思われ極めて興味深い。この事実と、今までに知られている事実との関連を注意深く調べる事も今後の重要な課題である。これらの結果はTunisia-Japan Symposium on Culture, Science and Technology 2004のproceedingとして出版予定である。2.関連して統計物理の臨海現象を確率論の極限定理の立場から定式化することを研究中である。特に、ガウスモデルとよばれる、通常の中心極限定理とは異なるスケーリングをもつ臨界現象を背景とする結果を数学的に厳密に証明することを考察中である。特に、いわゆる平均場で近似したモデルの一つであるキュリーワイスモデルについて、中心極限定理がくずれて異なるオーダーに対する極限定理が成立していることがEllis-Newmanによって証明されている。また、F.Dysonによって導入されその後多くの数理物理学者によって研究されている階層モデルに対しても同様の事実が最近示されている。この2つのモデルに対して、繰り込み解析の視点から確率論的極限定理を可能なかぎり詳しいオーダーを調べる事を考察中である。