演算子形式の2次元量子重力の厳密解によって2次元の重力アノマリーの非存在を示し、1983年にAlvarez-GaumeとWittenによって導かれた重力アノマリーは、少なくとも2次元では、T積とT^*積の混同による帰結であったことを明らかにした。時間微分と非可換ではあるが場の方程式と整合的なT積に対し、共変的経路積分によって定式化される場の量子論で用いられるT^*積は時間微分と可換になるが、その代償として場の方程式に見かけ上の破れが現れる。これはアノマリーとは無関係な問題であり、Alvarez-GaumeとWittenの与えた結果は正にこの場の方程式の見かけ上の破れと定量的に一致することを示した。この研究成果は論文"False Gravitational Anomaly"として現在投稿中である。 共形ゲージの2次元量子重力の可解性に関連して、無限個の保存量に対応する無限次元対称性の帰納的構成についての研究を行った。共形ゲージでは場の方程式が比較的簡単なことから無限個の保存量の構成自体には問題ないが、それぞれの保存量に対応する対称性を記述するためには、場の方程式、特にゲージ条件に対応する場の方程式を用いずに作用積分の不変性を導く場の変換則を構成しなければならない。これはNoetherの定理の逆問題に当たり、アノマリーが問題となるようなシステムでは重要な課題である。この研究成果については現在論文準備中である。
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