研究概要 |
確率変数やランダムな構造上に現れる離散パターンの数やそれが現れるまでの待ち時間の確率分布をさまざまな依存性の下で研究し、以下のような結果を得た。 1.Polyaの壺のモデルに現れるようなexchangeabilityをもつ確率変数列において、ある離散パターンが現れるまでの待ち時間の確率分布を導出した。それにともない、次のような知見が得られた。ある離散パターンの待ち時間の厳密分布は、そのパターンの逆順パターンの待ち時間の厳密分布と同じである。また、有限の長さの確率変数列の中で起こるあるパターンの数の確率分布とその逆順パターンの数の確率分布は同じである。 2.{1,2,...,m}-値確率変数列上を移動する長さkの記憶ウインドウの中で起こるさまざまな重複が起こるまでの待ち時間の確率分布を研究した。方法は主に条件付き確率母関数法による。とくに、first k-matchの待ち時間の分布は高次マルコフ依存系列において結果を得ている。 3.ランダムな2次元格子上に現れる任意の形をした有限パターンの待ち時間問題について、その厳密分布を求めるための一般的な方法を開発した。有限パターンの形を入力すれば、その待ち時間の確率分布に関するさまざまな条件の下での条件付き確率母関数の関係式をすべて導き出すアルゴリズムを考案し、数式処理システムを用いて具体例の計算も行った。 4.適当な増大していく停止時間列をとり、それらによる条件付けを行うことにより、オーダーkの幾何分布のオーダー間の関係を明らかにした。その結果、高次マルコフ連鎖などの依存系列上で一定の長さの連の待ち時間の確率分布を調べる際にも、より短い連の待ち時間の分布を利用することが可能になった。この考え方により、m次マルコフ連鎖上の長さkの連の待ち時間の厳密分布の確率母関数を、長さmの連の待ち時間の厳密分布の確率母関数を用いて表現することに成功した。 5.条件付き期待値に関するstepwise smoothing公式を利用して、一般的なaddition matrixをもつPolyaの壺からのサンプリングなどの依存性をもつランダムな系列上で、連やパターンに関する新しい確率分布を導出した。また、ランダムな系列上で観測する事象に関しても今までは取り扱うことの難しかった制約を入れた上で確率分布を導く方法を提案した。
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