研究概要 |
独立観測から従属観測への理論展開は確率統計の長期にわたる課題であるが,ここ10年間急速に理論と応用両面において発達している.従属観測である確率過程,時系列,多変量の取り扱いは,ファイナンス,環境統計,生物統計において欠かせない手法である.しかし今日では,実際データが含む欠測値の処理,付加的な局外値の混入,非線形的変動への対応など新たに提起され解決すべき問題が生じている.実際データが含むこれらの問題に対して,時系列GARCHモデルのファイナンスデータへの適用に関するロバストな技術の研究開発や指数型確率過程モデルの離散観測に対するロバストな統計的推測法の研究開発を行うことが本研究の目的である. 我々は確率過程の統計モデルにおける母数推定理論の研究を行い,連続データに基づく統計推測理論と実際には不可避的な離散データに基づく統計推測を検討し,離散化による情報量損失を計算した(シンポジュウム発表).最尤推定法,コントラスト推定法,マルティンゲール推定法などによる推定量の有効性と実効性の比較を行った.また,鰯の豊漁期不漁期のように,時系列を二値化し,コレログラムなどにおける情報の保存を可能にするロバストな方法を提案した(シンポジュウム発表).ベイズ的なモデル適合を提案して,実数を超母数にもつディリクレ分布を事前分布として採用したときディガンマ関数の導入によってその評価が可能になることを示した(kumagai and Inagakiの論文).実際のファイナンスデータの統計解析のために,データベースの作成,データ活用技術の開発,予測と検証,表示法などを研究している.さらに,双曲超平面モデルにおける情報量損失とエフロンの情報量曲率の計算を行った(投稿中). マルコフ過程従属性を持つデータに対する多様な連の分布的性質を考察し,条件付き確率母関数を使った理論と数式処理によるコンピュータ計算によってそれらの連の分布を実際に求めた(Aki and Hiranoの論文). 環境統計でよく現れる多変量空間データは,非常に多くの情報を含み多変量解析や時系列解析の手法を駆使する必要があるが,統計グラフ理論や標本バリオグラムとクリギングの適用を行い,空間データの解析を行った(白旗の論文).
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