研究概要 |
グラフの埋め込み問題とは、グラフを何かの構造の中に埋め込むことが出来るか、という問題である。構造としては曲面とか他のグラフを考えることが多い。グラフHをグラフGに埋め込むということは、HをGの部分グラフとして実現するということに他ならない。また、グラフの分割問題には頂点集合を分割する場合と辺集合を分割する場合があるが、いずれの場合にも分割されたそれぞれの部分が指定された良い性質をもっていなくてはならない。 本研究では主として閉路の埋め込み問題と頂点分割問題の研究を行い、以下のような結果を得た。 (1)1997年にBrandt達により、グラフGの位数が4k以上で非隣接2点の次数和が|V(G)|以上なら、Gはk個の閉路に分割できるということが証明された。そこで考えている閉路は3点以上のものだけだが、退化した閉路(すなわち、辺や孤立点)も許せば、次数条件を|V(G)|-k+1と弱くできることを示した。また、各閉路が指定した点を通るという条件をつけた分割が出来るための最小次数条件を求めた。さらに、同様の問題を2部グラフについても解いた。 (2)独立数が連結度以下ならばハミルトン閉路が存在するというErdos-Chvatalの定理はよく知られているが、本研究では長い閉路が存在するための独立数と連結度の関係を求めた。 (3)点素なk個の閉路を含む、という埋め込み問題の独立数との関係を調べた。すなわち、独立数がα以下で、k個の点素な閉路を含まないようなグラフの最大位数f(k,α)の性質をしらべ、一般にはf(k,α)≧3k+2α-3が成り立ち、αまたはkが小さいときには等号が成り立つことを示した。 (4)グラフの辺集合を(g, f)-因子に分解する問題を考え、Gが(mg+m-1,mf-m+1)-グラフで、すべての頂点xについてk≦g(x)≦f(x)が成り立っていれば、各因子が指定されたk本の辺を含むような(g, f)-因子に分解できることを示した。とくに、この条件の下で、m辺から成る辺素な部分グラフと直交する(g, f)-因子分解が存在する、という予想を肯定的に解決した。
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