研究概要 |
本年度の研究成果は,研究代表者等のグループが行ってきた量子情報通信理論の研究をベースとして,実函数論,函数解析学などの解析的手法や更に情報理論や物理学における諸概念を取り入れて,量子情報通信理論に関わる問題の中で,(1)量子通信過程において,チャネルは入力系の情報を出力系に伝達する働きをもち,相互エントロピーは,チャネルを通して入力系から出力系に正確に伝わった情報の量を表している.通信路容量(capacity)とは,チャネルが入力の情報量を最大でどれだけ正確に出力系に伝達することができるかを測るための尺度であり,チャネル設計や符号化の定理に関して重要な役割を果たしている.本年度の研究では,Shor達の定めたCoherent informationやLindblad-Nielsenのエントロピーが抱える問題点を指摘し、Ohya相互エントロピーが最も相応しいものであることを示す。純粋な量子チャネルに対する通信路容量について定式化し,雑音のある光チャネルに対して,具体的に量子通信路容量を計算した。さらに、量子ゲートの研究では,(2)量子計算状態にコヒーレント状態を用い、ビームスプリッターの研究をベースとして量子論理ゲートの実現化を目指す基礎研究を行った。 古典系の通信理論において,力学的エントロピー(KS(コロモゴロフ・シナイ)エントロピー)を用いた平均相互情報量が定められ,それをもとにして,符号化の定理が構築され,通信の効率などを数理的に取り扱うことができた.量子系においても,力学的エントロピーを量子系に拡張しようとする試みが,Connes-Stormer, Emch, Connes-Narnhofer-Thirring(CNT), Park, Alicki-Fannes(AF), Ohya(Complexity), Accardi-Ohya-Watanabe(AOW), Kossakowski-Ohya-Watanabe(KOW)等によってなされている.Accardi教授とAOWエントロピーを改良する研究を行った。 本年は,Kossakowski教授を招聘して11月に量子相互エントロピーを一般化する研究を行った。さらに、これと関連して平均相互エントロピーの研究をKOW力学的エントロピーをベースに行った。
|