研究概要 |
今年度は本研究課題の最終年度にあたるので、これまでに得られた成果のまとめを中心に研究を行った。 1、高次自己触媒反応拡散系において、自己触媒と反応物がともに空間的に拡散する場合についての研究を発展させた。すなわち、進行波解の存在と速度について、自己触媒反応の次数と拡散係数に対する依存性を、相空間における比較定理に基づいてすべての拡散係数にたいしてその全体像をほぼ明らかにした。その結果は、国際ワークショップ"Differential Equations in Mathematical Biology"(France,2005,7.11-13)および研究集会「反応拡散系に現れる時・空間パターンのメカニズム」(国内,2005,11.14-16)において発表した。さらに、高次自己触媒反応と密接な関係のある燃焼波モデルについて、1次元進行波解の不安定化とカオス的挙動が現れることを数値的に追試し、高次自己触媒反応での1次元進行波解の挙動が類似していることを数値的に確認した。両者の非線形相互作用を比較検討することによりそのメカニズムを解析的に明らかにすることは今後の課題である。 2、反応拡散系による伝染病モデルにたいして、上記1で得られた結果を適用し、高次の感染機構を仮定すると、伝染病伝播の速度にたいする線形予測が成り立たないことを指摘し、数値的に明らかにした。上記結果と反応拡散モデルの意義について、「感染症アウトブレイクの脅威に対処するための数理モデリング」に関するワークショップ(国内,2005,8.8)において発表した。また、伝染病モデルにおける非線形拡散モデルのこれまでの研究の概観と上記結果について、研究集会「第2回生物数学の理論とその応用」(国内,2005,11.21-25)において発表した。
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