研究概要 |
今年度の研究計画は「Genericな構成法の具体例をできるだけ多く集め、分析・整理する」ことであったが、これに関してほぼ計画通り遂行できた。以下、その具体的な成果について報告する。 Genericな構成法はHrushovskiによって開発された手法であり、現在まで多くのモデル理論の研究者による様々な応用等があるが、それらの手法を定式化してまとめたものがδ-genericな構成法であり、筆者のこれまでの研究対象である。 今年度は、genericな構成法に詳しい国内外の研究者達(Baldwin, Pillay,坪井,桔梗)と密接に連絡を取り合うことで、δ-generic以外のgenericな構成法について多くの例を集めた。その中でも大きな収穫はSudoplatovの例である。Sudoplatovは最近、Lachlan予想の反例を作るために新しいgenericな構成法を開発した。残念ながらその構成法はギャップが見つかりLachlan予想の反例にはなっていなかったのであるが、筆者はまだなお修正の余地があると考え、Sudoplatovの構成法の細かい分析を行った。現在、彼の手法を応用した論文を準備中である。 一方、平成14年度以前より続いているδ-genericな構成法の研究も平行して続行中である。まず、δ-genericな射影平面の範疇性に関して得られた結果は、Hodgesの問題の部分的解決となっている。更にδ-genericな擬平面に関する二つの結果も得られた。一つは安定性に関する結果で、δ-genericな擬平面で超安定なものが存在しないことがわかった。これはBaldwinの問題の部分的解決になっている。もう一つはδ-genericな擬平面における閉包の特徴づけである。これらの結果はいずれも技術的なものであるが、Lachlan予想に関連すると筆者は考える。
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