研究概要 |
種数2の閉リーマン面の退化について研究した。このような閉リーマン面は超楕円型であり,1次元複素射影空間上の分岐点を6個もつ2重被覆面とみることができる。この分岐点の1つを無限遠点とし,残りの分岐点はすべて自由に動けるようにする。前年度の結果によれば,これらの分岐点の差の比をテータ定数を用いて表すことができる。閉リーマン面のヤコビ多様体が,アーベル多様体のコンパクト化されたモデュライ空間の中で極限に移行したときに,この分岐点の差の比がどのように変化するかを調べた。ここで,アーベル多様体のモデュライ空間のコンパクト化は佐武コンパクト化を用いている。その結果,種数2の閉リーマン面の退化したものとして,どのような特異点をもった曲線が考えられるかがわかった。 また,アーベル多様体とその上の関数体(アーベル関数体)を一緒に考えたときに,その極限の多様体にはアーベル関数体の極限としての関数体をもつことを要請するのは自然なことである。アーベル関数体の極限の関数体は代数的加法定理を許す有理型関数のなす体とするのもまた自然な考えである。そのような関数体はWeierstrassが主張していたものであり,一昨年度にそれを決定することができた。こうした観点から佐武コンパクト化の縁の点の新しい解釈を与え,佐武コンパクト化がきわめて自然なコンパクト化であることがわかった。さらに,アーベル多様体のこのような極限のすべてが現れるモデュライ空間を考える手がかりを得た。
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