研究分担者 |
佐々木 隆 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (20154007)
武部 尚志 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (60240727)
池田 岳 岡山理科大学, 理学部, 講師 (40309539)
上木 直昌 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (80211069)
上 正明 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80134443)
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研究概要 |
1.KricheverとNovikovの1970年代の研究によって1変数可換微分作用素環と代数曲線上の正則ベクトル束のモジュライ(チューリンパラメータ)のつながりが明らかになり,その過程で代数曲線に関連する無限次元可積分系を構成するための一つの枠組が示された.この研究はやや暖味な部分を残すものだったので,KP階層に基づくその後のソリトン理論の発展をふまえて整理し直した. 2.最近のKricheverの研究に従って楕円曲線に付随する一種のソリトン型方程式の例(非線形シュレディンガー階層の楕円的類似)を構成した.従来のソリトン方程式と異なる特徴として,この方程式は通常の非線形シュレディンガー方程式の力学変数(1次元の場)に加えて楕円曲線上の正則ベクトル束のモジュライ(チューリンパラメータ)を新たな力学変数として含んでいる.このため従来のソリトン方程式とは異なる取り扱いが必要だが,結果として,多くのソリトン方程式と同様に無限次元グラスマン多様体の部分多様体の上の力学系に翻訳できることが明らかになった.この結果は一般種数の代数曲線の場合にも拡張できる. 3.楕円曲線を伴う古典的なソリトン方程式としてランダウ・リフシッツ方程式が知られているが,この方程式についても無限次元グラスマン多様体の部分多様体上の力学系としての解釈を与えることができた.この方程式はチューリンパラメータとは異質の原理に基づいて構成されているが,その背後には楕円曲線上のある種の正則ベクトル束が存在し,無限次元グラスマン多様体への翻訳において基本的な役割を果たす.
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