研究概要 |
「コンピュータを活用した作用素不等式とスペクトルの研究」の研究課題の遂行のため、今年度は研究の初年度にあたり、研究の成果を上げるために、二人の研究者に来日いただいた。まず、チェコ・科学アカデミー教授Vladimir Muller氏には2002年10月28日に来日いただき11月9日帰国の間、共同研究を行った。さらにポーランドのAdam Mickiewicz大学教授Andrzej Soltysiak氏に2003年1月21日に来日いただき1月28日帰国の間、共同研究を行った。Muller氏とは、特に作用素のn-tuple A=(A_1,...,A_n),B=(B_1,...,B_n)に対してAB=(A_1B_1,...,A_nB_n),BA=(B_1A_1,...,B_nA_n)としたときのTaylorスペクトルσ(AB)とσ(BA)との関係について共同研究を行った。幸いなことに、A=(A_1,...,A_n)が可換な正規作用素のときにσ(AB)=σ(BA)が成立することの証明ができ、Spectral commutativity of multioperatorsとして、共著論文とするべく、Muller氏が帰国後も共同研究を続けている。Andrzej Soltysiak氏とは、特に非可換な作用素のn-tuple A=(A_1,...,A_n)に対してのjoint spectrumの特性化についての共同研究を行った。可換な作用素のn-tuple A=(A_1,...,A_n)のときにはTaylorスペクトルσ_T(A)が取れるが、非可換な作用素のときのjoint spectrumについてはR. Harte氏によるHarte spectrumなど知られているが、研究が進んでいない。Soltysiak教授は非可換な作用素のn-tuple A=(A_1,...,A_n)がhyponormal作用素のときにσ_π(A)=p(γ(II(σ(A)))の等式を発表した。今回の来日では、この等式をhyponormalより弱いp-hyponormalやlog-hyponormal作用素に一般化することを目的として山崎丈明氏を加えて、共同研究を行った。等式σ_π(A)=p(γ(II(σ(A)))は非可換な作用素のn-tuple A=(A_1,...,A_n)がp-hyponormal作用素でも成り立つことが分かり、これらの結果を3人での共著の論文On approximate point joint spectrum of p-hyponormal and log-hyponormal operatorsとしてまとめるべく、帰国後も共同研究を行っている。
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