研究概要 |
Graham-濱田-Kohr(2002)は、単葉正則写像全体の族の部分族で、星型正則写像を含み、増大度定理|z|/(1+|z|)^2【less than or equal】|f(z)|【less than or equal】|z|/(1-|z|)^2が成り立つ族S^O(B^n)をsubordination chainを用いて記述した。subordination chainの満たす性質が増大度定理に重要な影響を与えている。そこで、本研究では、まず、無限次元バナッハ空間の単位球B上において同様の族S^O(B)を考察し、B上の両正則写像がS^O(B)に属するための条件を考察した。また、Loewner微分方程式の解がLoewner chainを導き出すことを、無限次元バナッハ空間の単位球B上において証明した。その応用として、無限次元バナッハ空間の単位球B上の局所両正則同型写像が単葉であるための様々な特徴付けを与えた。更に、回帰的無限次元バナッハ空間の場合には、Loewner chainとそのtransition mappingがLipschitz連続であることを示した。今後は、有限次元の場合に、Loewner chainの第一要素が擬等角拡張を持つための十分条件を調べたい。 固有正則有理写像の族Rat(B^n,B^<2n>)の分類問題については以下の通りである。B^nはSiegel upper-half space H_nと正則同型であり、∂B^nはHeisenberg hypersurface ∂H_nと同型であることが知られている。F∈Rat(B^n,B^<2n>)とすると、上の同型により、∂H_nから∂H_<2n>への正則写像F^^〜が導かれる。F^^〜のTaylor級数の係数に関する連立方程式を導き出すことに成功した。今後は、その連立方程式を解いて、Rat(B^n,B^<2n>)を求めたい。
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