研究概要 |
本研究課題は,空間多次元での粘性気体のモデル方程式(粘性保存則)に対する非線形波の漸近安定性の解析を目的としていた.平成14年度に行った研究代表者等の研究によって、多次元半空間上の粘性保存則に対して,境界条件と無限遠方での条件との関係のより解の漸近挙動は空間一次元の場合と同様に,希薄波,定常波、及びそれらの重ね合わせ波に分類される事が分かった.さらに,その各々のケースに対して,初期摂動の属する関数空間に依存する詳細な漸近レートを得た.この単独方程式に対する結果をより物理的に意味のある方程式系に拡張する事を目標としていた平成15年度の研究では,空間多次元の圧縮性ナビエーストークス方程式の球対称解の外部問題に対して幾つかの結果が得られた.この外部問題は半空間上の問題となり,研究代表者等によって開発された様々な手法を用いる事が出来る。まず空間次元が2以上の等エントロピー流に対して,外力項を持つ方程式系が非有界領域上で時間大域解を持ち,それは対応する定常解に収束する事が示された.さらに,空間次元が3以上ならば熱伝導を含む方程式系に対しても,同様な結果が成立する証明された.その後,平成16年度に行った研究では,粘性保存則に対して成立する減衰レートに関する定理が、一次元半空間上のナビエーストークス方程式でも成立することが示された.具体的には,空間一次元半空間上で等エントロピーの定常解への詳細な収束レートを得た.この定理は超音速流と亜音速流の両者に置いて成立する.さらに,超音速の場合では、同じ結果が熱伝導を考慮に入れた一般的な圧縮性ナビエストークス方程式に対しても同様な定理を証明した.本研究課題は今年度が最終年度となるが,一次元半空間上で成立する定理を空間多次元の場合に拡張することを目的として研究を継続する予定である.
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