研究概要 |
通常の確率空間においては、その空間上の有界な確率変数のなす関数環と期待値写像の組を考えると、この組は元の確率空間を復元するに足る情報が含まれている。このとき、この関数環は可換である。このことより、関数環を非可換化することにより、非可換確率空間は与えられる。通常の独立性の概念を、非可換確率空間にどうにゅうすることは可能であるが、こえはテンソル積に基づくもので、独立な確率変数は互いに可換であるということになり、非可換性が反映されたものではない。Voiculescuにより、導入された自由独立性は、真に非可換性が反映された独立性の概念のひとつである。独立性が混合モーメントの計算則を与えるものと考えると、ある種の公理の下では非可換確率空間の独立性としては、通常の独立性、自由独立性、ブール独立性の3種類しか得られない。しかし独立性の概念は合成積を定め、合成積はモーメント-キュムラント公式を導くことに着目して、本研究ではモーメント-キュムラント公式の変形で独立性ん変形を捉えることにした。 自由独立性とブール独立性を補間する幾つかの変形自由合成積に関するs-自由,r-自由合成積の研究を行った。特に、それぞれの変形に対応したガウス分布、ポアソン分布の研究を行い、s-自由変形の場合にはs-変形フォック空間を構成し、その生成作用素、消滅作用素を用いて、s-自由ガウス型確率変数、s-自由ポアソン型確率変数を与えた。さらに、よく知られたボゾン・フォック空間とフェルミ・フォック空間を補間するq-変形に関してそれを一般化し2パラメータ変形への拡張を行った。(q,t)-変形ならびに(q,s)-変形について、交換関係を記述する、それぞれの変形に対応する集合の分割統計に関する研究を行った。さらに、もっと一般化された自由変形合成積であるBozejkoにより導入されたΔ-自由合成積に関して、非交叉分割上の過重関数を与えることに成功した。この過重関数は非交叉分割上の一般的な分割統計を与えるものであることが示唆された。
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