2本の交差する渦管という、渦のつなぎ替えが起きる初期条件を用いて、オイラー-ラグランジュ定式化によるナビエ-ストークス方程式の擬スペクトル法による数値実験を実行した。用いた格子点数は128^3、256^3および512^3である。 まず、粘性拡散効果のため、拡張されたラグランジュマップの勾配の行列式が短時間に極端に小さくなってしまうことを発見した。そこで、流体粒子のラベル変数の可逆性を保つために行列式が小さくなる時A=xとリセットを行った。その結果、リセットが頻繁に起きる時間帯が、渦のつなぎ替えに正確に対応していることがわかった。また、リセットの時間間隔は乱れの小スケールのもつ特徴的な時間に近い。この意味で、リセットがつなぎ替えの定量的な判定規準になることを明らかにした。次に流体粒子の軌道の曲率を決める接続Cを評価したところ、時間スケールv|C|^2が、つなぎ替えの時間スケールに対応することが判明した。また、物理空間における構造として、渦度|ω|と擬渦度|ζ|の等値面を比較した。つなぎ替えが起きはじめる時刻に両者の形状はおおむね良く一致しているが、ブリッジ構造は擬渦度より渦度の方により顕著に観察され、両者に差違が現れる時間帯に渦のつなぎ替えが対応することが分かった。以上の結果は現在、論文として投稿中である。 同じ初期条件を用いてレイノルズ数をさらに大きくした計算も行ったところ、コルモゴロフ相似則を満足する、発達した乱流が発生する。その際に起きる極めて頻繁なリセットと乱流との関係を研究中である。また、2次元磁気流体力学方程式の予備的な計算も行い、この場合にも磁気リコネクションとリセットが対応することを確認した。
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