研究概要 |
前年度(平成14年度)は,非線形拡散方程式系から定まるアトラクターに対して時間大域的に安定性と信頼性の保証された離散スキームの構成を中心に研究を行いました。本年度(平成15年度)は,前年度の成果を基にして実際の方程式系の解を大域的に計算しました。 初めに,走化性・増殖モデルについては,最大定数定常解が安定な場合にはネットワークパターンが,同定常解が不安定の場合には,短期的にはターゲットパターンとミシン目ターゲットパターンがまた長期的には走化性が強まるにしたがって蜂の巣,帯状,ミシン目帯状,動的帯状,動的斑点の各パターンが現れることを見出しました。これにより,走化性・増殖モデルはパターン形成において大変強い潜在能力を有しており,大腸菌の集合パターン形成を始めとして,神経ネットワークの形成過程,蜂の六角形状巣の構成課程など様々な自己組織化現象の解明に向けて大変有力であることを示しました。次いで,追跡・逃避-ロトカボルテラモデルについては,ソリトンと類似の性質を有する進行波を見出すとともに,それらが概周期的に振舞うことを見出しました。この進行波の詳しい性質を調べること,出現メカニズムの解析は今後の課題ですが,本モデルがこれまでに知られていない新しい非線形現象を表している可能性があることを見出しました。 以上の成果を得るために,本年度は,アトラクター研究の権威者であるエフェンディエフ教授(シュトッツガルト大学)を招聘するとともに,走化性・増殖モデルの提案者である三村教授(広島大学)や辻川教授(宮崎大学,本研究分担者)等との交流を計りました。また,シミュレーションを実施するために計算ソフトを購入するとともに計算データを処理するために大学院生に協力してもらいました。
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