研究概要 |
主な研究目標は,1:摩擦項をもつ線形波動方程式を非有界領域において扱い,それまで知られているよりもより速い減衰率の導出,2:更にそこで得られた基礎的な新しい減衰評価を,巾型の非線形項と線形の摩擦項を持つ半線形波動方程式の藤田型の臨界巾問題に応用する,ということの2つである。 非有界領域が全空間の場合は,1976年頃にA. Matsumuraによって,すでに線形波動方程式の解の減衰評価式が得られているので,それとM. Nakao のsmall data perturbation methodを組み合わせて,空間1,2次元の時に,先の藤田型問題の時間大域可解性に関する部分を完全解決した(J. Math. Soc. Japan, to annear),この研究が発端となって,その後外部領域や半空間での混合問題の臨界巾問題の解決・発展への機運が高まっていったように捉えている。事実,1次元外部問題である半直線上の消散型半線形波動方程式の混合問題の臨界指数が2に等しいことを最近の論文にて証明した(preprint, submitted)。このきっかけになったのは,共同研究者であったMatsuyamaとの共著論文(Sci. Math. Japon. 55, 2002)の中で開発した,いわゆる「時間積分法」の適用により,1次元外部の臨界指数が全空間での指数よりも「小さい」ということを最初に発見指摘した論文である(Diff. Int. Eq., to appear)。これが「突破口」となり,半空間での臨界指数問題の発見への研究が始まり,最近になってまだプレプリントの段階ではあるが,時間大域可解性に関する部分の解決がすべての次元に対して公表された。
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