1999年に開発された池畠-松山の工夫とは、非有界領域上で(線形)波動方程式や熱方程式の解のL^{2}-有界性を導出しようとするとき、一般にポアンカレの不等式が使えないために起こる深刻な困難に出会うが、それを克服するMorawetzの方法を本質的に改良した簡便で有用な工夫の一つである。ここではその工夫で得られた線形方程式についてのL^{2}-評価を半線形発展問題に応用して、Fujita臨界指数に関わるいくつかの有力な時間大域可解性や摩擦項を持つ波動方程式の「拡散現象」についてのいくつかの結果を得た。一方、熱方程式の場合には、その初期値-境界値問題を半空間で取り扱う場合、全空間でのコーシー問題における場合よりも、その解のある種の時間減衰速度が"速くなる"、という結果はかなり前から知られていた。ここではそれと類似の結果が、摩擦項を持つ波動方程式の半空間での混合問題についても成り立つことを発見した。更に、有界な星型障害物の外側において波動方程式の混合問題を考えると、その障害物の周りの局所エネルギーが時間とともに代数オーダーで減衰することは、1960年代のMorawetzに始まる一連の仕事で指摘されている。ただし、その結果の導出にあたっては、初期値のサポートのコンパクト性が本質的に使われていた。ここでは、上記「池畠-松山の工夫」と最近開発されたTodorova-Yordanovによる「重みつきエネルギー評価の方法」を巧く組み合わせることによって、そのMorawetzの結果における初期値のサポートのコンパクト性の制限を除去することに成功した。
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