研究概要 |
本研究において,本年度は多様体上の磁場における力学系について量子・古典対応問題を研究し,一定の成果を得た。この成果は,10月28日〜11月1日に京都大学数理解析研究所で開催された国際会議「微分作用素のスペクトルと逆問題」において,「Quantum energies and classical orbits in a magnetic field」と題した講演で発表した。この会議の報告集は,アメリカ数学会から2003年中に出版される予定である。 得られた成果の要約は以下のとおりである。多様体上の磁場は幾何学的には主ファイバー束における接続の曲率として定式化され,磁場中の荷電粒子の運動を記述する力学系は,主ファイバー束上のKaluza-Klein計量による測地流の力学系として考察することが出来る。この様な定式化に基づいて,磁場中の古典力学系の周期軌道と量子力学系のエネルギーの漸近的な振る舞いの半古典的性質の関係を明らかにした。より具体的に,ある種の量子化条件を満たす古典周期軌道が存在すれば,その周期軌道に対応した量子エネルギー準位が半古典近似の意味で存在することが示された。 この結果は,1970年代中頃J.V. RalstonやV. Guilleminによって測地流の力学系について得られている結果の磁場版と見なせる。また,Gutzwillerによる(発見的に展開されている)跡公式の厳密な取扱いの一つと目指すものであると考えられる。この結果の証明には,Guillemin達によって考案されたエルミート型のフーリエ積分作用素の理論が応用されている。
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