研究概要 |
今年度は本研究計画(3年間)の3年目であり、昨年度の研究継続に加え、新たに記号力学系の上の非可換エントロピーの研究とC*環の自己準同型とHilbertC*双加群を用いた記号力学系のC*環への一般化を研究した。非可換エントロピーとはボワクレスクがコンパクトな位相空間の上の位相変換に対して定義されている古典的位相エントロピーを一般の非可換C*環上の自己同型や自己準同型やさらに完全正値写像に対して拡張的に定義したものある。本研究においてはまずそのボワクレスクの非可換エントロピーを記号力学系を定義するラムダグラフシステムから作られるC*環上の標準的な完全正値写像に対して計算した。その結果その値は記号力学系の位相共役不変量を与えることが証明された。その値は位相的マルコフシフトに対しては従来の古典的な位相エントロピーに一致するものの、ダイクシフトと呼ばれるマルコフではない記号力学系に対しては従来の古典的な位相エントロピーに一致しないことも計算された。したがってこの非可換エントロピーは記号力学系に対して新しい位相共役不変量を生むことがわかった。この結果は3月に日本大学で行われた日本数学会で報告されまた論文「Topological entopopy in C*algebras associated with lambda-graph systems」としてまとめられ現在国際雑誌に投稿中である。またC*環の自己準同型とHilbertC*双加群を用いた記号力学系のC*環への一般化は、従来の記号力学系の理論を大幅に非可換C*環に拡張するものとして、論文「Actions of symbolic dynamical systems on C*algebras」にまとめられた。さらにHilbert C*双加群への応用も自然に生まれ、論文「On Strong shift equivalence of Hilbert C*-bimodules」にまとめられ共に現在、国際雑誌に投稿中である。また昨年から継続している記号力学系からできる具体的なC*環の計算例の結果が論文A simple purely infnite $C^*$-algebra associated with a lambda-graph system of the Motzkin shift, (Math.Z)に発表された。
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