本課題研究に関する今年度の研究成果は大きく分けて二つある。以下、1.無限大不変測度を持つエルゴード的変換と対に考えることの出来る期待値無限大の確率変数列の問題に関するもの、2.無限大不変測度を持つ変換の典型的な例であるマハラム変換の不変測度の特徴付けに関する成果、についてそれぞれ成果の概要を述べる。 1.期待値無限大の確率変数列の問題に関して、従来は独立同分布を持つ確率変数列についての研究が多くなされていたが、今回はcontinued fraction mixingとよばれる弱い従属性を持つ定常確率変数列に対して大数の強法則成立のためのtrimmingに関する条件を与えることに成功した。また、その応用例としてJacobi-Perron Algorithmとよばれる多次元連分数展開の最大係数についてこの大数の法則がn・log nの位数で成立することを示した。また、continued fraction mixingでなくとも同様の結果が成り立つような確率変数列が存在することを示した。 2.マルコフシフトから作られる横断関係に付随するマハラム変換の局所有限不変測度の特徴付けに成功した。これらの測度はマルコフシフトのヘルダー連続なポテンシャルによる平衡測度から作られる測度として特徴づけることができる。今回の研究ではこのマハラム変換に対して対数型エルゴード定理が成立することも示した。この研究をさらに押し進めて、現在マルコフ型でないサブシフトに関してもそれらの横断関係に付随するマハラム変換の局所有限不変測度の特徴付けを研究している。特にβシフトの横断関係について不変確率測度が一意にしか存在しないことを示すことに成功した。さらにβシフトに関しては横断関係に付随するマハラム変換の局所有限不変測度の特徴付けにほぼ成功している。
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