研究概要 |
この研究は,微分方程式や写像により定義される力学系の大域的構造や分岐を調べる為の,Conley指数などの位相幾何学的方法を開発し,さらにその方法を計算機上に実現することをめざすことにあった.平成14年度から16年度の間に大別して次の成果を得た: [A]特異摂動的ベクトル場のConley指数理論とその応用-ここでの方法は,Conley指数の情報から特異摂動的ベクトル場のある種の解の存在を結論するというものである.この議論を使いやすい形に定式化したのが,Gedeon-Kokubu-Mischaikow-Reineck-Oka (1999)であり,それの応用として浅い容器中の流体の波を記述する方程式で記号力学系の意味での多様な解の存在を示した.またslow manifoldが1次元よりも大きい場合に適用できる枠組みを拡張した.これの応用としてGardner-Smoller (1983)が扱ったある種の反応拡散方程式の周期進行波解の存在の我々の立場からの別証明や,さらに上記のような記号力学系の意味での複雑なこれまでに知られていない解の集合の存在も得た. [B]正則ベクトル場の研究-Poincare-Bendixson型定理を余次元1葉層構造へ拡張することを目的とし,半径Rの閉円板の近傍で定義された余次元1正則葉層構造Fに関して,ある種の円盤の境界に関する非横断性の結果を得た. [C]Henon写像族の一様双曲性およびnon-maximal entropy locusの研究-3次のHenon写像において(a,b)=(-1.35,0.2)とした写像は,一様双曲的でしかもいかなる拡大的な1次元多項式写像の小さな摂動とも共役にならないことが証明できた. [D]不動点全体の集合の組みひも型の研究-円板上で定義された向きを保つ同相写像が有限個の不動点をもつとき,組みひもの概念を用いて不動点集合に同値関係を導入した.不動点全体の集合の組みひも型が各同値類の不動点指数を完全に決定することを示した.
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