本研究は、円盤銀河の形成とハッブル系列の起源を明らかにすることを目的としている。この目的のため、独自に開発した化学力学進化を考慮した銀河形成数値シミュレーションコードを用いて、空間スケールの異なる二種類の大規模数値シミュレーション(宇宙論的スケール、単独銀河スケール)を行った。 1.化学力学進化コードの性能評価の発表(Kawata & Gibson 2003) 独自に開発した化学力学進化コードの詳細と、その性能評価を雑誌論文として発表した。このコードは、銀河の力学進化に加え星形成に伴う重元素生成循環過程(化学進化)を整合的に組み込み、化学進化の面で世界的に最も洗練されたコードとなった。論文では、このような詳細な化学進化の計算を、観測データと比較することで、より詳細な銀河形成史を探ることができることを示した。 2.宇宙論的スケールのシミュレーションによる楕円銀河形成の研究(Kawata & Gibson、投稿中) 宇宙論的スケールのシミュレーションでは、様々な形態の銀河(円盤銀河や楕円銀河)が得られたが、ここではまず、楕円銀河に注目した。計算コードの特徴のおかげで、楕円銀河のX線と可視光の両方で知られている観測的性質を、初めて同時に調べることが可能となった。その結果、X線観測を説明するために必要となる輻射冷却の機構が、可視光観測で問題を起こすことが明らかになった。 3.単独銀河スケールのシミュレーションによる、低金属量の星の運動の研究(Brook et al. 2003) 単独銀河スケールの円盤銀河形成シミュレーションを用いて、低金属量の星の運動を細かく調べた。シミュレーション結果と太陽近傍の星の運動の観測を比較したところ、観測でみられた高離心率かつ低金属量の星の集団が、小さな銀河の降着過程ではぎ取られた星の名残である可能性が高いことがわかった。 4.マゼラン銀河のシミュレーション(Yoshizawa & Noguchi 2003) マゼラン銀河と銀河系の相互作用のシミュレーションを、世界で初めて、星形成も含んだコードを用いて行った。観測で検証可能な多くの予想を立てた。
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