宇宙論的数値シミュレーションで得られた円盤銀河に着目しその形成史を調べた。特に、円盤銀可本体の形成後に、降着してきた矮小銀河の力学進化に着目した。このような矮小銀可は、ホスト銀可である円盤銀河に降着後、ホスト銀河の潮夕力により完全に崩壊し、円盤銀河のハロー成分の一部になった。この崩壊した倭小銀河の星成分の力学的性質を解析した結果、このような矮小銀河起源のハロー星は、空間情報は崩壊しても、元の矮小銀河の運動的性質を継承し、その特徴的な速度情報を保持することがわかった。 これとは別に、高解像度数値シミュレーションにより、降着中の矮小銀河が、円盤銀河の銀河円盤に与える、重力的影響を調べた。結果として、太陽の200億倍の質量を持つ矮小銀河が、我々の銀河系の半径約15kpcの位置を通過すると、銀河円盤成分の端が大きく湾曲される(Warp)ことがわかった。この結果は、観測で知られている、ある高速度中性水素雲(Complex C)の分布を定性的に説明できることがわかった。しかし、このような軌道をもつ矮小銀河は観測されていないため、Complex Cがこのような起源で形成した可能性は低いことが示された。また、上記の質量の矮小銀河が降着すると、銀河円盤成分自体が、矮小銀河の潮夕力により壊されることもわかった。したがって、円盤銀河では、そのような矮小銀河の降着は円盤が形成した後には、起こらなかったことが結論された。 最後にケーススタディとして、現在、我々の銀河系に降着しつつある矮小銀河の1つである小マゼラン星雲の進化史を詳しくしらべた。小マゼラン星雲のガス成分と星成分、さらに星形成を整合的にシミュレートした結果、観測される中性水素の分布や小マゼラン星雲にみられる若い星の存在が、大マゼラン星雲および我々の銀河系との相互作用によるものとして説明できることがわかった。
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