種族IIIの星の正体をその元素合成と極端な金属欠乏星の化学組成とから探る研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14540223
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 野本 憲一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90110676)
• キーワード: 星の進化 / 星の化学組成 / 星の種族 / 超新星 / 銀河の化学進化 / 元素合成 / 鉄

研究概要

本研究は、宇宙の進化における第一世代の星、すなわち、重元素を含まない種族IIIとよばれる星の正体を、星の化学組成の観点から、理論的に解明することを目的としている。特に着目したことは、最近の観測によって、極端な金属欠乏星の化学組成が、特異なパターンを示すことである。例えば、金属量の少ない星ほど、Feに対してMn, Crが太陽組成比より少なく、逆にZn, Coが1ケタ近く多い。これらの特異なパターンには、種族IIIの星の元素合成が大きく反映されていると思われる。今年度は、まず、種族IIIの星の進化と爆発を、広い範囲の質量や爆発エネルギーに対して計算し、その元素合成の基本的な特徴を明らかにした。
1)大質量星の脈動不安定性を解析し、超新星まで進化できる星の上限質量を求めた。種族IIIの星では金属量の多い星に比べて、より大質量の星まで超新星爆発を起こしうることがわかった。
2)種族IIIの星の準静的進化と超新星直前の星のコアの構造は、種族I、IIの星と大きな差はない。ただし、星の外層構造、半径には、顕著な違いがある。
3)超新星爆発と元素合成が星の質量、金属量、爆発エネルギー、非球対称度にどう依存するかを計算し、特に極超新星(ハイパーノバ)規模の大爆発による元素合成の特徴が、上記の極端な金属欠乏星で観測されているFe, Mn, Cr, Co, Znの組成比の特徴を説明しうることを示した。
4)太陽の130-300倍の質量を持つ星が起す、電子陽電子対の発生による核爆発型の超新星では、上記特徴を説明できない。

研究成果

• [文献書誌] Mazzali, P.A., Deng, J., Maeda, K., Nomoto, K., et al.: "The Type Ic Hypernova SN 2002ap"ApJ. 572. L61-L65 (2002)
• [文献書誌] Kinugasa, K., Kawakita, H., Ayani, K., Kawabata, T., Yamaoka, H., Deng, J., Mazzali, P.A., Maeda, K., Nomoto, K.: "Early-Phase Spectra of "Hypernova SN 2002ap"ApJ. 577. L97-L101 (2002)
• [文献書誌] Umeda, H., Nomoto, K., Tsuru, T., Matsumoto, H.: "Peculiar Chemical Abundances in the Starburst Galaxy M82 and Hypernova Nucleosynthesis"ApJ. 578. 855-861 (2002)
• [文献書誌] Kawabata, K.S., Jeffery, D.J., Iye, M., Ohyama, Y., Kosugi, G., Kashikawa, N., Ebizuka, N., Sasaki, T., Sekiguchi, K., Nomoto, K., Mazzali, P.A., Deng, J., Maeda, K.: "Spectropolarimetry of SN 2002ap : A High Velocity Asymmetric Explosion"ApJ. 580. L39-L42 (2002)
• [文献書誌] Seraray, C.L., Fesen, R.A., Nomoto, K., Maeda, K., Hoeflich, P., Wheeler, J.C.: "Carbon Monoxide in the Type Ic Supernova 2000ew"PASJ. 54. 905-910 (2002)
• [文献書誌] Umeda, H., Nomoto, K.: "First-generation supernovae in the mass range of 20-130 Mo and the metal abundance pattern of a very iron-poor star"Nature. (in press). (2003)