研究課題/領域番号 |
14540230
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
三好 蕃 京都産業大学, 理学部, 教授 (90065855)
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研究分担者 |
田原 譲 名古屋大学, 理工科学総合研究センター, 教授 (10135296)
原 哲也 京都産業大学, 理学部, 教授 (00121541)
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キーワード | 銀河団 / ダークマター(暗黒物質) / X線天文学 / 天体プラズマ / 宇宙膨張 / ハッブル定数 / スニヤエフ・ゼルドビッチ効果 |
研究概要 |
銀河団の構造については理論的研究と観測データの解析を並行して行い、前者に関しては等温ベータモデルに代る新しいモデルを立ち上げ、パラメータの値をうまく選ぶことによりそのモデルを観測された銀河団のX線表面輝度分布によくフィットさせることができることを確かめた。しかし、それから求めた銀河団の質量分布と重力レンズ効果の観測から得られた値がそれほどよく合っていないため、現在その原因を追求中である。観測データの解析については、ヨーロッパのXMM-NewtonやアメリカのChandraといったX線観測衛星で取得された銀河団の撮像データを次々に解析している。以前に日本のX線天文衛星ASCAで取得した近傍銀河団A2029のデータの解析から、その銀河団の中心にいるcD銀河の中心部に活動銀河核の一種であるBL Lac天体が濃い塵に隠されて存在している状況証拠をつかんでいたが(ASCAの角度分解能があまり良くなかったため確定とまではいかなかった)、今回のA2029のXMM-Newtonデータの解析からそれが決定的であることが分った。今後さらに解析を進め、銀河団内部におけるダークマターの詳しい分布等も調べた上で、論文発表する予定である。 ハッブル定数Hoの測定については、既に宇宙マイクロ波背景放射の観測衛星であるWMAPの観測結果より精度の高い値が得られているが、これは宇宙全体の平均的な値を与えるものである。現実には宇宙のあちこちに存在する密度揺らぎのために宇宙膨張の速さが場所によって異なり、Hoの値も揺らいでいる。銀河団を用いてHoを測定する我々の方法によれば、そうしたHoの局所的揺らぎも(観測対象を増やす事によって)原理的に観測可能であり、今後も継続する価値がある。今回発表した論文は、遠方の銀河団A773を用いてHoの値を求めた結果をまとめたものである。
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