平成14年度の研究実施計画に記載された項目を基に研究を進め、以下のような新知見を得た。 (1)若い大質量星団は星間ガスの運動が比較的穏やかな星生成領域から星間ガスが大規模な乱流状態にある爆発的星生成領域まで様々な環境下に存在するが、大質量星団の形成率は必ずしも星生成率と密接には相関せず、星間ガスの乱流運動が激しい、あるいは星間ガスにかかる外圧がより大きな環境下でより効率的に形成される観測的示唆を得た。 (2)硬X線が若い大質量星団の良いトレーサーと成り得るという最近の観測からの示唆を確かめるため、特異銀河NGC2276中のそうした星団を多数含むと思われる大規模な爆発的星生成領域についてのASCA及びXMM-NewtonのX線観測データ解析を行い、とりわけ後者の解析結果から予想通りその領域が異常に強い硬X線放射を放射している事を発見した。また、同銀河のCO分子輝線について野辺山45m電波望遠鏡でマッピング観測を初めて行い、同銀河の分子雲の空間分布に大規模な非対称性があることや問題の爆発的星生成領域に分子ガス分布の欠如があることを見出した。 (3)銀河団中心の楕円銀河のまわりには球状星団が異常に多く存在する事があるが、この原因を探るため、銀河団の中心銀河の性質と親銀河団の性質の関係を統計的に調べ、親銀河団の合体に連れて中心の銀河も合体を繰り返し成長すると言う示唆を得た。また、これとの関連で、銀河団中心銀河と同じくらい明るく、ダークハローが銀河群なみの大きさを持つ孤立した楕円銀河の一族について、初めて統計的にそのX線特性を調べ、これらが銀河群の『化石』であるという従来の説を支持する証拠を得た。
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