平成15年度の研究実施計画に記載された項目を基に、多数の文献から集められたデータから構築された様々な銀河の大質量星団・星団系のデータベースを解析して統計的研究を進め、大質量星団形成過程の解明の上で重要なヒントとなる以下のような新知見を得た。 1.近傍銀河の球状星団や中心核銀河団や若い大質量星団は、それぞれの年齢と存在する環境が全く異なるにもかかわらず、星団の質量と特徴的半径(half-light radius)内の平均密度の間に共通して比較的tightな相関があり、どの場合も平均密度は質量にほぼ比例する。ただし、近傍の銀河の球状星団系では、この関係は銀河の内側の領域と外側の領域とで、球状星団の構造パラメータ間の関係同様、系統的に異なる。これらを十全に説明する星団形成・進化のモデルは、今のところ、無い。 2.近傍の楕円及びSO銀河の球状星団系の性質について、親銀河の周りの環境(銀河の混み具合)との関係に注目すると、親銀河の周りの環境が密なほどその球状星団系の動径方向の密度分布の傾きが浅く、星の数に比べて星団数が多い(以上、2004年日本天文学会春季年会(R64c)で発表済)。 3.近傍銀河の中心核銀河団(Nuclear Star Cluster ; NSC)の明るさは、その親銀河の絶対的な大きさを表す量(光度、質量など)が大きいほど明るい。また、親銀河の周りの環境が密になればなるほど、NSCとバルジの光度比は大きくなる。この事から、そのスケールの隔絶した違い(銀河:数10kpcに対して、NSC:10pc)にも関わらず、NSCの形成・進化過程のglobalなスケールの親銀河の性質への依存性が示唆される(2003年日本天文学会秋季年会(R52b)で発表済)。
|