本年度の一番大きな成果は、統一雲モデル大気(Unified Cloudy Model : UCM)と理論的進化トラックを組み合わせることにより、色-等級図上において、L型矮星からT型矮星に至る系列が説明できることが分かったことである。(Tsuji and Nakajima2003)。 最近のアストロメトリーデータを基にした冷たい矮星と褐色矮星の色-等級図と、UCMを経由して理論的進化トラックから変換した色-等級図を比較した。L型矮星とT型矮星をカバーする極低温矮星全体に対して、モデルと観測とのまずまずの一致が示された。これを達成するには、初めて、ダスト雲を含む自己無撞着な非灰色モデル光球が用いられた。最近の年周視差観測から明らかになった、早期型T型矯星のJバンドにおける増光は、薄いダスト雲の光球の内部領域への移動分自然な結果とて説明されバーガッサー達が提案するように、L/T型転移の際にダスト雲が分裂するという証拠には必ずしもならない。また光度、有効温度が僅かに下がるだけでおこる晩期型L型矮星から早期型T型矮星へのすばやい青化は、薄いダスト雲が、光学的に薄い領域から、厚い領域に移動する直接の結果である。このように、理論的進化トラック、統一雲モデル大気、観測された星の基本的パラメーターは、新しく定義されたL型矮星とT型矮星にたいして、統一的な描像を与えたことがわかる。
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