研究概要 |
前年に引き続き,非可換幾何学の観点から量子ホール系を解析した.量子ホール系は最低ランダウ準位に束縛された電子の作る世界であるが,この電子のx座標とy座標は交換しない,という著しい特徴を持つ.その結果、2層量子ホール系の内部対称性は,W_∞をSU(4)拡大したW_∞(4)で与えられる. 先ず,クーロン相互作用する非可換電子を支配する微視的ハミルトニアンを導き,電子・空孔対の励起エネルギーを厳密に導出した.2層系では,スピンと擬スピンの自由度があるが、交換相互作用エネルギーの違いで,一般に擬スピンの方がはるかに励起されやすいことを厳密に示した.私のこの理論的成果は共同研究者の寺澤等の最近の実験成果を説明する.次に,位相的励起であるSU(4)スカーミオンの微視的理論を考察した.幾つかの一般的性質を厳密に導いたが,励起エネルギーを計算することはできなかった.そこで,長波長で成り立つ有効ハミルトニアンを導出し,これを用いて励起エネルギーを求めた.SU(4)スカーミオンは,均衡2層系では擬スピンSU(2)スカーミオンに帰着し,均衡が破れるにつれスピン成分が混入し,1層極限でスピンSU(2)スカーミオンになることを世界で初めて示した.私のこの理論的成果は共同研究者の熊田等の実験成果を見事に説明する. 研究成果は国際会議(Max Planck Institute, Stuttgart, July 2-5, 2003)で発表し,4編の原著論文として国際的著名誌に発表した.更に,1篇の原著論文を準備中である.
|